― 患者さんの人生に寄り添う外来を目指して ―
はじめに
本指針は、診療を画一化するためのマニュアルではありません。
患者さん一人ひとりに最適な医療を提供するために、当院が大切にしている理念と、すべての医師・スタッフが共有すべき診療姿勢・行動指針を示したものです。
医師は、それぞれの専門性や経験を活かしながら、本指針の理念に基づいて診療を行います。
当院が目指すのは、
「またこの先生に診てもらいたい」
「家族にも安心して勧められる」
「困った時にはまず相談したい」
と思っていただける外来です。
診療技術だけではなく、人間性、チーム医療、継続的な改善を通じて、地域で最も信頼されるクリニックを目指します。
第1章 私たちの使命
私たちの使命は、病気を治療することだけではありません。
患者さんの健康寿命を延ばし、その人らしい人生を支えることです。
そのために、
- 安全で質の高い医療を提供する
- 患者さんの価値観を尊重する
- 科学的根拠に基づいた医療を提供する
- 予防医療を実践する
- 継続的に健康を支える
ことを使命とします。
第2章 当院が目指す外来
当院では、「待ち時間」も医療の質の一部であると考えています。
患者さんを長時間お待たせすることも、必要な診療が不足することも、どちらも望ましい医療ではありません。
私たちが目指すのは、
「質が高く、効率的な外来」
です。
そのため、医師・看護師・管理栄養士・検査技師・受付など、多職種がそれぞれの専門性を発揮しながら診療を行います。
患者さんのお話や生活背景を十分に把握することは重要ですが、そのすべてを医師が担うのではありません。
スタッフが十分な問診を行い、その情報を共有することで、医師は診断、意思決定、治療方針の決定、医学的説明など、医師にしかできない業務に集中します。
タスクシフトを積極的に活用することで、
- 医療の質
- 診療効率
- 待ち時間
- 患者満足
を同時に向上させることを目指します。
第3章 診療の目的
当院では、診療の目的を「病名をつけること」や「薬を処方すること」とは考えません。
診療の目的は、
患者さんが自分の健康状態を理解し、より健康で、自分らしい人生を送るための行動につなげること
です。
そのため、診療では次の5つを大切にします。
1.正しい診断を行う
適切な問診・診察・検査により、病態を正しく把握します。
2.患者さんが理解できるよう説明する
医学的に正しいだけでは十分ではありません。
患者さんが納得し、自ら説明できるくらい理解できることを目標とします。
3.患者さんと一緒に治療方針を決める
医師が一方的に決めるのではなく、患者さんの価値観や生活背景を尊重しながら治療方針を決定します。
4.行動変容を支援する
本当に大切なのは、診察室の中ではなく、患者さんが診察室を出た後です。
薬を飲む、生活習慣を改善する、睡眠を見直す、検査を受ける、再診する。
患者さん自身が健康につながる行動を選択できるよう支援します。
5.継続して健康を支える
診療は一回では終わりません。
患者さんの健康状態やライフステージの変化に応じて、長期的に伴走します。
第4章 診療の基本姿勢
患者さんの受診目的を理解する
症状だけではなく、
「今日は何を期待して来院されたのか」
を理解します。
例えば、
- 原因を知りたい
- 安心したい
- 薬が欲しい
- 薬はなるべく飲みたくない
- 詳しく検査したい
- 医療費を抑えたい
- 生活習慣を改善したい
- 仕事や学校へ早く復帰したい
など、患者さんが本当に求めていることを理解した上で診療を行います。
安全性を最優先にする
見逃してはいけない疾患を常に意識し、安全性を最優先に診療します。
診断だけではなく理解を提供する
診断名を伝えるだけではありません。
「なぜその診断なのか」
「なぜその検査が必要なのか」
「なぜその治療を勧めるのか」
を分かりやすく説明します。
第5章 CRM(患者さんとの長期的な関係づくり)
私たちは、一回の診療ではなく、患者さんの人生を長期的に支えることを目標とします。
患者さんごとの価値観を理解する
患者さんによって望む医療は異なります。
- 詳しく調べたい
- 必要最小限でよい
- 薬を希望する
- 生活改善を優先したい
- 医療費を抑えたい
など、価値観を尊重した医療を提供します。
患者さんのニーズを継続的に把握する
患者さんの希望や価値観は時間とともに変化します。
そのため、初診時だけでなく継続的にニーズを確認します。
カルテには診断だけでなく、
- 受診目的
- 健康上の目標
- 検査への希望
- 薬への考え方
- 医療費への配慮
- 生活背景
- 仕事や家庭の状況
なども記録し、チーム全体で共有します。
次回診療を設計する
診療は今日で終わるものではありません。
- 検査結果説明
- 治療効果判定
- 生活習慣改善
- 薬剤調整
など、次回受診まで設計します。
予防医療を実践する
患者さんから相談される前に、
- 生活習慣病管理
- 予防接種
- 睡眠
- 認知症予防
- 肥満対策
などを適切なタイミングで提案します。
紹介されるクリニックを目指す
紹介をお願いすることが目的ではありません。
患者さんが
「家族にも勧めたい」
「友人にも紹介したい」
と思える診療を積み重ねます。
第6章 タスクシフト
当院では、医師がすべてを行うことを理想とは考えません。
スタッフが十分な問診を行い、患者さんの生活背景や困りごとを把握します。
医師は、その情報を活用し、
- 診断
- 治療方針の決定
- 医学的説明
- 意思決定支援
- 必要な検査の提案
に集中します。
管理栄養士、看護師、検査技師、受付など、それぞれが専門性を発揮し、チーム全体で患者さんを支えます。
第7章 患者さんから信頼される医師
診療開始時
- 笑顔で挨拶する
- 患者さんの目を見て話す
- スタッフの問診内容を確認し、本日の相談事項を把握する
診療中
- 分かりやすい言葉で説明する
- 検査や治療の目的を説明する
- 治療の選択肢を提示する
- 患者さんの価値観を尊重する
- 患者さんの不安を確認する
- 必要な検査や予防医療を提案する
- 診断だけでなく今後の見通しを説明する
診療終了時
- 今日の内容を整理して伝える
- 再診の目的を説明する
- 患者さんが安心して帰宅できる状態で診療を終える
第8章 チーム医療
医療は一人では提供できません。
受付、看護師、管理栄養士、検査技師、事務など、すべてのスタッフが患者さんを支えるチームです。
互いを尊重し、それぞれの専門性を活かしながら診療を行います。
第9章 カルテ
カルテは「次に診療する医師やスタッフが困らないこと」を目的に記載します。
診断だけでなく、
- 患者さんの希望
- 価値観
- 生活背景
- 治療方針を決定した理由
も記録し、チーム全体で共有します。
第10章 改善活動
現状維持を目標とはしません。
診療や業務の中で改善点に気付いたら積極的に提案します。
「もっと患者さんのためにできることはないか」
を常に考え続けます。
第11章 当院が評価する医師
当院では診療能力だけではなく、
- 患者さんから信頼される
- スタッフから信頼される
- 患者さんの価値観を尊重できる
- 必要な検査を適切に提案できる
- 適切な再診につなげられる
- 外来全体の流れを意識できる
- タスクシフトを積極的に活用できる
- チーム医療を実践できる
- 改善提案ができる
- 学び続ける姿勢がある
- 患者さん、スタッフ、クリニック全体の利益を考えられる
このような医師を高く評価します。
おわりに
当院では、「良い診療」とは、医師一人が頑張ることではなく、チーム全体が力を合わせ、患者さん一人ひとりに最適な医療を継続して提供できる状態であると考えています。
そのため、本指針は医師だけでなく、すべてのスタッフが共有するクリニックの共通理念として位置付けます。
私たちが目指すのは、病気を治療するクリニックではなく、患者さんの人生を支えるクリニックです。
診断や処方はゴールではなく、その先にある患者さんの健康と人生をより良くするための手段です。
私たちは、患者さんが「診察を受けた」だけではなく、「健康になるための一歩を踏み出せた」と感じられる診療を目指します。
そして、一人ひとりの患者さんに
「ここに来て良かった」
「また相談したい」
と思っていただける外来を、医師・スタッフ全員でつくり続けます。

